相棒season21放送当時(2022年10月~2023年3月)の感想記事です。
第11話「大金塊」感想
★相棒の元日スペシャルはこれまで色々見てきましたが、今回は色々な現場を行ったり来たりとか国家の大きな闇が隠されているとか派手なものではなく、基本的に袴田議員の邸宅が舞台の、親子関係にスポットを当てたお話でした。
★そしてこれがとても面白かった!私は好きなエピソードでした。
season21で一番好きかもしれません。
ところどころ金田一君的なテイストも感じられて、レトロな不気味さがいい味を出していたと思います。
★袴田茂昭との因縁については、先のシーズンを視聴していないので、同じく知らない亀山君に説明する形で、ダイジェストで流してくれて私としても助かりました。
相棒にありがちな、証拠がいつの間にか消されている…という形で罪に問えなかったパターンか…。
★袴田議員へ金塊強奪予告の脅迫状が届く。
これを捜査することになるのが「熟年探偵団」。
リタイアしたおじさん3人が実に楽しそう。そしてその事務所がまた…。
駄菓子屋のお菓子を、読みたい本を大人買い。それわかるな~。
正直駄菓子は子どものころほどの美味しさはもう感じられなくなってしまったんだけど(寂しいけど)、それでもあのケースごと買いたくなる気持ち、本当に共感する。
★そして「明智小五郎」ポジションは孫娘の寧々。
この寧々がまたいい味を出してました。
右京さんとすっかり意気投合して仲良しに。
右京さんのこういう年齢を問わないところいいよね。
★そしてそして、まさかのseason4-8「監禁」エピソードがここで出てくるとは!!
あれはサトエリの壊れまくった演技が素晴らしすぎた伝説の回だと個人的に思っています。
そこで出てきた中学時代の右京が書いた小説『亡霊たちの咆哮』がここに絡んでくるとは恐れ入りました。
その伝説となっている小説により、特命二人も熟年探偵団と一緒に捜査に加わることに。
★さて今回は予告状といい「地獄の軽業師」といい、ミステリー要素満載な展開でしたが、袴田の息子茂斗にも、庭師にもミステリーがらみの伏線が張られていました。
そして右京さんの十八番、「屋敷で迷子になる」も発動(笑)。
真相にからむ庭師のミステリーコレクションやブロンズ像の発見もこの「迷子中」に成し遂げられました。
★袴田の屋敷にある金塊はすでにすり替えられていたんだけど、探偵団や亀山たちが最初に見た時に「迷子中」の右京がいなかったのは、右京がいると「偽物」だとわかってしまうからかな、と思いました。
あの右京さんが気づかないというのもしっくりこないし、いきなり手で触れたりする可能性も否定できないし(笑)。
そのあたりうまくできているなと思いました。
そして茂斗が金塊を見たがる右京に異常にイライラしていたのもそのためか、と納得。
★わざわざ予告状を出す意図は「金塊の具体的な場所を特定するため」ではないかとする右京。
金田一君ばりの仮面男の侵入はありましたがその男は難なく確保。
いやこの逮捕劇ふざけすぎている…と思ったらここからさらに謎を呼ぶ展開に。
「意図」は、右京が推理した「金塊場所の特定」ではありませんでした。
★袴田は滅多に金塊を確認しないので、盗んだとしてもわざわざ偽物を置いておく必要はない。
カモフラージュの必要はないのになぜ偽物を置いておくのか?
その真の意図に気づくのはもう少し先。
★金塊の正体は、袴田が22年前に受け取っていた賄賂だった。
その日から袴田は政治家として出世街道を歩むことに。
しかし本当に目指していたのは、清廉潔白だった二代目の父だった。
でも父は政界では出世もできず存在感もないに等しい。
結果的に袴田は初代である祖父と同じ道を歩むことになってしまった。
★そしてそんな父の重荷をわかっていたのが息子の茂斗。
この人もきついなあと思う。あんな強烈な母親だもんね…。
子どもの頃にミステリー全集を燃やされた傷はきっと癒えないんだろうなと思う。
★父同様、茂斗も理想としていたのは清廉な政治家だった二代目。
金塊の偽物を置いたのは、「外見だけ光っていて中身はスカスカ」ということを、二代目のブロンズ像を純金に銅メッキで造ったのは「外見はブロンズでも中身は純金=中身は本物」ということを暗示したかったから。
★予告状の真の意図は、ただ盗んでも滅多に見られないために気づかれないだろうから、盗まれたことを発覚させるためだった。
そして何より、理想とは真逆の政治家への道を歩み始めたきっかけとなった「金塊」を消し去り、父の重荷をおろしてあげたかったから。
★結局身内の窃盗なのでこの件は事件にはならない。
そして以前の事件で、意図せず証拠の音声データを消去され、内調に助けられてしまった袴田は引退を表明。
内調の支配下に置かれてしまった状況、理想とはかけ離れた現在の自分の姿、そして息子の思い、もうすべて手放したくなったんだろうな。
★それでも引退したからといって、秘書にすべての罪を押し付けて自身の罪を逃れている状況が消えてなくなるわけではない。
罪を償わせることが右京の目的。
右京さんの「首を洗って待っていろ」は、「袴田も辛かったんだな…」なんていう感傷を打ち砕くもの。
当然罪は罪。
★そしてここで亀山君。
「理想で現実に立ち向かえ」「お父さんの果たせなかった夢を、君が引き継げばいい」
これが亀山薫なんだよね…。
右京さんの厳しさと、正義は貫くけど心に寄り添う亀山くん。
二人のバランスが最高。
★そしてこのセリフが…袴田に亀山警視庁再雇用を決心させたと言える。
そうか…嘱託の立場でいくのかと思っていたらここで正式な復職が来るのか。
情けをかけたとか、恩を売ったとかではない、どういう感情なのかは説明できないけれど、「そうしたい」と思ったとしか言いようがない気がする。
「イタチの最後っ屁」と表現していたけれど…。
しかし大河内さんはなんで再雇用を告げる時あんなに威圧的なの?(笑)
★そして袴田との因縁は思わぬ形で決着がつきました。
ここで音声データのコピーを青木君が持ってくるとはね…。
結果袴田は警察へ。
果たして息子の茂斗はこの結末をどう感じているのだろうか。
ラストの表情からは、受け入れているとも特命への怒りをもっているともどちらとも取れる。
ただ清廉潔白な政治家が父も本人も理想なのであれば、罪をきちんと償うことは避けて通れない事柄でもあるんじゃないかな。
真の意味で父の重荷をおろしてあげるためには、罪をなかったことにしてはいけない。
けれど息子の立場としては父を守りたい気持ちもあるかもしれない…。
これが今後特命との関係にどう作用していくか。
★ラスト、すっかり仲良くなった右京&寧々の電話。
と思ったらそんなに自分の小説が黒歴史なの?右京さん。
あんなにいろんなところで伝説になっているのに(笑)。
★右「一番のニュースは君が帰国したことでしょうかねえ」
亀「それは言い過ぎでしょう」
まったく言い過ぎではないです!!
相棒ファンにとってはビッグ過ぎるニュースでしたよ!
これからも抜群のコンビで楽しませてください。
以上で終わります。