【深まる分断をどう考えるか】『福音派‐終末論に引き裂かれるアメリカ社会』を読みました

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「BS世界のドキュメンタリー」で

今回はこちらの本を読みました。

きっかけは「世界のドキュメンタリー」で、「福音派」という存在がいかにアメリカのトランプ政権下で存在感を高めているかを知ったからです。

番組で取り上げられていた福音派は、今にして思えばいわゆる「右派」に該当するのだと思います。来るべきイエスが降臨する終末を信じ、現在進行で起こっているあらゆる苦難はその前兆であるとする考え方です。

番組でその思想を見た私は本当に驚きました。もちろん本心はわかるはずもありませんが、「福音派」の人々が本気でイエスの降臨を信じ、そのために発生しうる暴力的な行為も許容しているように見えたからです。

そこから「福音派」という存在が気になるようになり、書店で見かけたこちらの本を購入することになりました。

一読しただけでは難しいけれど

福音派の起源ともいうべき「原理主義」からスタートし、さまざまな団体やキーパーソンが出てくる本書の内容を、しっかりと理解するには一読ではとても足りません。まだまだ理解できていないところがたくさんあります。

一読して思ったのは、想像以上に宗教団体が政治と密接に結びついていることでした。政権側としても選挙に勝利するために団体を取り込む必要がある。そして福音派としても自らの思い描くキリスト教世界を体現するために、それを実行してくれる大統領候補に接触する。こうしたことがトランプ政権下のみならず繰り返し行われてきたのがアメリカの政治の歴史であることを痛感しました。

分断解消の難しさ

長い人種問題の歴史を有するアメリカ社会では、ささいなきっかけにより異なる立場の主義主張が爆発する危険性を常に抱えていると思われます。

私は15年ほど前にアメリカに住んでいたことがありますが、居住区など中に入ってみないとわからない「分断」を目の当たりにし、衝撃を受けたことを覚えています。そしてこの分断はちょっとやそっとのアクションで容易に解決できるものではないという根深さを感じました。

福音派「右派」に顕著ですが、白人中心の文化と結びつく形で発展してきたという側面があります。そこに差別意識があるのかどうかは簡単に結論付けられませんが、「白人中心の世界」という形の終末論に結びつきやすくなることは事実だと思います。実際に私の視聴した番組内では、「福音派」から驚くぐらい人種差別的な発言が聞かれました。

差別意識がなく「そういう世界」として福音派右派がイエス降臨後の世界を思い描いていたとしても、白人キリスト教徒を中心とした世界観を志向することに変わりはありません。こうした信仰が現実世界と結びついたときに、深刻な人種間の分断が起こってしまうのではないかと考えます。

「福音派」も一枚岩ではない

「世界のドキュメンタリー」の印象があまりにも強かったため、私は「福音派」全体が保守的で白人中心主義的な考えを持っているのかと思っていました。

しかし当然ながら福音派の中には「中道的」な考えを持つ人たちもいます。右派が徹底的に反対している中絶や同性婚に対して寛容な考えを持つ福音派もいて、そうした人の中には、台頭してきた右派と同じような過激な思想を持っていると思われたくないために福音派を名乗ることをやめた人もいるそうです。

「福音派」とひとくくりにして見てしまっていた私の勘違いを本書は正してくれました。

まとめ

福音派右派の台頭がアメリカ社会の分断を加速させることは間違いないと思います。根深い人種間の分断だけでなく、同性愛者や性別に対する考え方の隔たりによる分断も進みかねません。

宗教的な教えとして合致するかどうかが判断の基準になっているため、科学的・論理的な議論が成り立ちにくい面があることも難しいところだと思います。本書でも触れられていましたが、「進化論」を否定する立場の存在には驚かされました。

私は聖書をきちんと理解しているわけではありませんが、聖書やイエスの教えとして「白人中心主義」が存在するとは思えません。しかし「解釈によっては」そうできてしまうということなのだと思います。こうなってくると客観的な数値や根拠を提示したところで、「神の教え」という論拠を持ち出されてはそこで議論をストップせざるを得なくなります。議論が成立しない、という点でも分断は加速してしまうのではないかと思います。

日本で生まれ育ち特定の信仰を持ち合わせていない私には、対立を生む根本的な部分を、理論としては理解できても心情として理解することは不可能だと思います。人間の自然発生的な善意として、他者の価値観を思いやるというあり方の実現がなぜここまで困難なのかも理解しがたい部分があります。しかしそれは分断の歴史に身を置いていないある意味「他人事」だからそう思えるだけのことなのかもしれません。

正解もわからず読後は暗澹たる気持ちになりましたが、現在進行形で起こっていることをきちんと理解するために本書を手に取ってよかったと思っています。

まだまだ正確な理解には程遠く間違った解釈(感想)を書いている可能性は否めませんが、読後の感情をきちんと記録しておきたいと思います。再読を通して理解を深めていきたいです。

以上で終わります。

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