相棒season22 第17話-18話「インビジブル」感想

相棒
記事内に広告が含まれている場合があります。

相棒season22放送当時(2023年10月~2024年3月)の感想記事です。

第17-18話「インビジブル」感想

★最終回目前に、前後編できましたか。
そして前後編だけあって見ごたえがあり、かつ重た過ぎる内容でした。
どう解釈して、どうすることが最善だったのかが見えてこない、理不尽な現実を突きつけられる回だったので…これぞ相棒なんだけど、精神的にはちょっとしんどかったかな。


★右京と希望の幼少期は、おそらく「特殊能力」という点で共通するものがあったと思います。
右京さんに関して家庭環境や親子関係を把握できるエピソードは私の記憶にはありませんが、警察組織の中でも自分の信念をあそこまで貫けるということは、幼少期に自己肯定感を培うことができたためであると思います。
親か、あるいは近しい大人によって自分の能力が認められる、肯定される状況があった。
一方希望の場合は、その能力を肯定される状況になかった。
むしろ否定に近い形になっていた。


★幼少期の周囲の環境というのは、こうまで将来に影を落としてしまうのかと暗澹たる気持ちになりましたね。
これはドラマではありますが、現実にも当てはまることだと思うので。
環境や人間関係のために素晴らしい能力が開花しないまま、あるいは抑圧されたまま、大人になることを余儀なくされる人たちがいるという現実は辛いです。
それにしても…同級生は仕方ないにしても、希望の周辺の大人、特に教師まで気味悪がってちゃだめだろ…。


★今回の爆弾事件は、施設で育った希望、卓の二人が、同じく施設で育ち二人の兄代わりであった金森のかたきを取るために行ったものでした。
この金森の自殺に至る顛末もげんなりする。
弱い立場に暴力をふるうしか能のない牧野、警察庁に戻ることしか考えていない正義、本当に救いようのない二人。
ラストで正義が失脚したようなのでそれはよかったです。
あんなのが警察の上にいたんじゃ組織がつぶれるよ。
いや、むしろ組織とはそういうものなのか…?
そうではないことを願いたいですが。


★対照的に正義の父親、征志郎は筋の通った人物として描かれていましたね。
ラストで市長を辞職、都知事選の出馬もなくなりましたが、世論に押されてというよりも自分で決断したんだろうなと思います。
「プライベートで後ろ指をさされるようなことはない」と言い切っていて、本当にその通りなんだと思うけど、まさか自分が名づけた「希望」という名前が爆弾を仕掛けられる原因になるなんて、思いもしなかっただろうな。


★征志郎はわざわざ乳児の「希望」の顔を見に行ってまで、その名をつけた。
生まれてすぐ置き去りにされてしまった「希望」に、その後の人生が少しでも明るいものであるようにと、心を込めて名付けたであろうことは征志郎の人柄から伝わってくる。
でも「絶望しかない」人生を送ってきた「希望」にとっては、何の救いにもならないどころか、憎しみすら抱かせるような名前になってしまった。
このあたりのすれ違い、とてもうまく描かれているなと思いました。


★征志郎のこの行動には全くとがめられる点はないと個人的には思うけど、生まれてすぐ捨てられること、誰も肯定してくれないこと、そういう絶望に満ちた人生があるということを、彼が心の底から理解できていなかったということはあるのではないかな。
知識として知っていても、実際にそのただ中にいる人たちの絶望を本当の意味では理解できない。
絶望している当事者にとっては、中途半端な優しさは意味がない以上に害を及ぼすこともあるのかもしれません。
こう書いている私自身も、真の意味で理解できることはないでしょう。
だからこそ何が正解なのか、という葛藤を突きつけられる回でした。


★ただ、正義の育て方に関しては「後ろ指をさされない」とは言い切れない結末になってしまいましたね。
もちろん征志郎だけの問題ではなく、描写はされませんでしたが奥さんやそのほかの要因も当然あるわけですが。
こちらもおよそ「正義」とは程遠い行動から考えて、この時点では名づけには失敗していると言わざるを得ない。
「希望」には少し光が見えたものの、「正義」が体現される可能性は今回見えなかった。
征志郎の人間性によって体現される日が来ることを期待したいところです。


★希望がなぜ右京を事件に巻き込んだのか。
「勝負したい」なんていう理由ではないでしょう。
おそらく初めて自分を理解してくれる、自分と同じ匂いのする人と出会えたからではないだろうか。
金森や卓は兄弟同然の仲ではあっても、希望の真の孤独までは理解できない。
同じように特殊ともいえる能力を持ち、人生を歩んできた右京だからこそ通じるものがあったのではないか。
その右京に「何かあったら」と名刺を渡され気にかけられたことは、孤独な希望にとってどれだけインパクトが強いものだったか。


★右京の能力がずば抜けていることを希望は嫌というほどわかっていたはずで、右京を巻き込めば自分の犯行はすべて達成できないかもしれないと予想できたはず。
それでも右京を引き入れたのは、希望はわかってほしかったんじゃないかな、自分の苦しみを。
そして心の底では止めてほしかったのではないか、と思っています。
右京も自分と通じる少年に何とか希望を見出してほしかった。
最後に「希望はあります」と繰り返していたのは右京の心からの訴えのように聞こえました。


★またしても長くなってしまった…。
今回のエピソード、考えさせられることが多すぎて、文章にしないと消化できません…。
最後に、右京に説得され銃を下ろし、彼に抱きしめられながら泣きじゃくる希望の姿はとても痛々しかったけど、罪はそう重くないだろうし、月並みな願望だとは思うけどどうにかして「希望」を見出してほしい。
ラスト、一人でチェスをする右京さんの姿から、きっと右京さんが支えになってくれるという「希望」が見えました。
心情を察して右京さんを一人にして、邪魔が入らないようにしてあげる亀山君も素敵でした。
亀山君のこういう温かさ、重苦しい回では特になくてはならないものだな~と思います。


以上で終わります。

タイトルとURLをコピーしました